DNAメチル化などのエピジェネティックな異常は、DNAの一次構造の変化を起こすことなく、遺伝子情報を制御するメカニズムとして研究の重要性が認識されている。TGF-βスーパーファミリーに属するBMPはリンパ球の分化、増殖抑制、アポトーシスに関与する。その中でもプロモーター領域にCpGを多く含むBMP-6遺伝子についてメチル化解析を様々なタイプの白血病症例で行った。メチル化はCOBRA法およびBisulfite sequencing法により、遺伝子発現はRT-PCR法とWestern blot法により解析した。 急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、成人T細胞性白血病(ATL)症例において、BMP-6遺伝子のメチル化について解析した。AMLの5%(3/67)、ALLの16%(6/38)、CLLの5%(1/21)にメチル化が認められたのに対し、悪性度が高く予後不良の白血病であるATLでは82%(49/60)にBMP-6遺伝子のメチル化が認められた。ATLでは他の白血病より優位にBMP-6遺伝子がメチル化されていることが、新たに判明した。メチル化が認められた症例では、BMP-6の発現(mRNA、蛋白)が抑制されていた。引き続きATLとBMP-6遺伝子メチル化との関係に焦点を当て、ATL発症メカニズムの一端の解明に迫りたい。 一方、上記の遺伝子メチル化研究と平行して、リンパ腫や骨髄腫などの造血器腫瘍の病態解明の研究、例えば癌遺伝子と腫瘍細胞のメカニズムについて、またウイルスと悪性リンパ腫の関係についての研究も行なった。
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