DNAメチル化などのエピジェネティックな異常は、DNAの一次構造の変化を起こすことなく、遺伝子情報を制御するメカニズムとして研究の重要性が認識されている。TGF-βスーパーファミリーに属するBMPはリンパ球の分化、増殖抑制、アポトーシスに関与する。その中でもプロモーター領域にCpGを多く含むBMP-6遺伝子についてメチル化解析を様々なタイプの白血病症例、特に成人T細胞白血病(ATL)を中心に行った。メチル化はCOBRA法およびBisulfite sequencing法により、遺伝子発現はRT-PCR法とWestern blot法により解析した。 これまでの本研究課題において、悪性度が高く予後不良の白血病であるATLでは他のタイプの白血病に比べて有意差をもってBMP-6遺伝子のプロモーター領域のメチル化が認められることが示された。そこで次にATLの病型の違いについて、すなわち「くすぶり型」「慢性型」「リンパ腫型」「急性型」に関して、BMP-6遺伝子のメチル化に差が認められるかどうかを検討した。進行型である急性型ATLの96%、リンパ腫型ATLの94%に対して、進行の緩徐な型である慢性型ATLの44%、くすぶり型ATLの20%と、より進行型の症例でBMP-6遺伝子のメチル化が認められた。BMP-6遺伝子のメチル化がmRNA転写抑制と蛋白発現低下をきたすことも確認した。更には脱メチル化剤である5-aza-2'-deoxycytidineを加えることでBMP-6転写物の発現が回復したことより、BMP-6プロモーター領域のメチル化が転写サイレンスに関連していると考えられた。 一方、上記の遺伝子メチル化研究と平行して、白血病やリンパ腫などの造血器腫瘍の病態解明の研究、特に癌遺伝子と腫瘍化のメカニズムについての研究も行なった。
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