DNAメチル化などのエピジェネティックな異常は、DNAの一次構造の変化を起こすことなく、遺伝子情報を制御するメカニズムとして研究の重要性が認識されている。TGF-βスーパーファミリーに属するBMPはリンパ球の分化、増殖抑制、アポトーシスに関与する。その中でもプロモーター領域にCpGを多く含むBMP-6遺伝子についてメチル化解析を様々な造血器腫瘍ついて、当該年度では特に多発性骨髄腫を中心に行った。メチル化はCOBRA法およびBisulfite sequencing法により、遺伝子発現はRT-PCR法により解析した。 これまでの本研究課題において、BMP-6遺伝子プロモーター領域のメチル化が認められた造血器腫瘍は、リンパ腫ではバーキットリンパ腫や悪性度の高いびまん性大細胞型B細胞リンパ腫、白血病では成人T細胞性白血病の急性型・リンパ腫型であった。次に多発性骨髄腫においてBMP-6遺伝子のメチル化解析を34症例、骨髄腫細胞株5例について行なった。34症例中メチル化が認められたのはわずか1例(3%)で、細胞株5例中1例であった。メチル化が認められたサンプルでは、Bisulfite sequencing法によりメチル化の存在が確認され、BMP-6遺伝子の発現が抑制されていることが判明した。メチル化が認められた症例は、進行が極めて早い悪性度の高い骨髄腫であった。これらの結果により、多発性骨髄腫ではBMP-6遺伝子プロモーター領域のメチル化は普遍的なものではないが、極めて悪性度の高い骨髄腫では、本遺伝子のメチル化が認められ、悪性度を現すメチル化マーカーになり得る可能性が示唆された。 一方、上記の遺伝子メチル化研究と平行して、リンパ腫などの造血器腫瘍の病態解明の研究および癌ウイルスの腫瘍化のメカニズムについての研究も行なった。
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