研究概要 |
本研究課題では,白血病幹細胞の維持・制御に必須な転写因子を同定し,新たな分子標的療法の標的と成り得るか基礎的検討を行うことを目的としている.平成20年度では,マイクロアレイを用いた解析で同定された正常造血幹細胞に高発現する遺伝子群について,急性骨髄性白血病検体より分離した幹細胞分画における発現を定量的PCRにて解析した.この解析により正常および白血病幹細胞分画に共通に高発現するmiRNA/転写因子を見出した.Gene Set Enrichment Analysisによる解析では,正常HSC/AML幹細胞に共発現する44遺伝子を同定したが,申請者らの構築したタンパク相互作用データベースを用いた解析では,これら遺伝子群は一つの大きなクラスターを形成しており,機能的に密接に関連していることから,これらは幹細胞の維持・制御に必須の遺伝子群と考えられた(論文投稿中).平成21,22年度では,これらの遺伝子群の臨床的重要性について解析し,治療標的としての有効性について検討した.臨床的意義について検討するために,独立した正常核型AML160例の遺伝子発現プロファイルを入手した.遺伝子発現プロファイルと予後との相関を解析した結果,我々の同定した白血病幹細胞関連遺伝子群のうち25個が,上述の正常核形AML患者の生存における非常に強い予後因子となっていることが明らかとなった.これは,AML細胞はAML幹細胞に由来しており,AMLの臨床像もまた肌幹細胞の特徴を反映していることを強く示唆している.また,興味深いことに,平成20年度に同定した正常HSCに特異的に発現する225個の遺伝子群も,上述のAMLにおいて,白血病幹細胞関連遺伝子とともに,非常に強い予後不良因子となっていた.以上から,我々の同定した正常造血幹細胞,白血病幹細胞に特異的に発現するmiRNAを含む遺伝子群は,急性骨髄性白血病の予後不良因子であり,これらの遺伝子群は,新規治療の治療標的として有効であるとの結論に達し,現在,論文投稿中である
|