研究概要 |
Cyclin dependent kinase 2(CDK2)由来HLA-A*2402拘束性の2つの9merペプチド(CDK2_<158>CDK2_<178>)は我々が同定した腫瘍関連抗原である.これまで我々は,(1)骨髄性白血病細胞および白血病細胞由来樹状細胞(LDC)が,抑制性補助刺激分子の一つであるGITRのリガンド(GITRL)を発現していること,(2)LDC上のGITRLがドナーのナイーヴCD8^+T細胞上のGITRと結合することによって,ナイーヴCD8^+T細胞からCDK2ペプチド特異的細胞傷害性T細胞(CDK2-CTL)の誘導が抑制されること,(3)白血病細胞由来の可溶性GITRL(sGITRL)がCDK2-CTLの活性を抑制すること,(4)GITR/GITRL結合によって白血病細胞内でインドールアミン酸素添加酵素(IDO)活性が高まり,その結果白血病細胞でトリプトファンが代謝され,細胞外に分泌されるキヌレニンによってCDK2-CTLの活性が抑制されることを明らかにしてきた.臍帯血移植(UCBT)後にCDK2-CTLの効果的な誘導による白血病再発予防法の開発を目的として,GITRLによる白血病細胞のドナー免疫監視機構からのエスケープ機序を破綻させうるか検討を行った.CDK2_<158>をパルスしたHLA-A2402遺伝子導入T2細胞を抗原提示細胞として,健常者ナイーヴCD8^+T細胞から誘導したCDK2_<158>-CTLの,CDK2^+GITRL^+骨髄性白血病細胞と5日間共培養後の増殖活性を,CDK2_<158>/HLA-24pentamerを用いたCFSE assayで検討したところ,1回のみであったCDK2_<158>-CTLの分裂回数が抗GITR抗体を添加することによって4回に増加した.また,共培義の際にIDO阻害剤である1-MTを添加すると分裂回数は3回に増加した.CDK2^+GITRL^+骨髄性白血病細胞と共培養後CDK2_<158>-CTLの5.3%に認めたIFNγ陽性細胞が,抗GITR抗体の添加によって9.1%に増加したことより,IGITR/GITRL結合の阻害やGITR/GITRL結合後白血病細胞内で高まるIDO活性を阻害することによって,GITRL^+骨髄性白血病細胞に対するCDK2-CTLの細胞増殖活性と細胞傷害性が増強することを明らかにした.UCBT後にCDK2ペプチドをワクチンする際,抗GITR抗体とIDO阻害剤を投与することによって効果的にCDK2-CTLを誘導できる可能性がある.
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