研究課題
肝星細胞は肝線維化の進展において重要な役割を演ずることが知られている。これまでに我々は、四塩化炭素による肝傷害時には造血幹細胞に由来する細胞が肝星細胞に分化しうることを報告した(Blood 2008 111:2427)。しかし、肝星細胞への分化に、造血幹細胞自身が関与するのか、それとも好中球、単球、リンパ球といった分化成熟した血液細胞が関与するのかは不明のままである。今回、我々はenhanced green fluorescent protein(EGFP)マウスの骨髄または脾臓から分離した単球、好中球、B細胞、T細胞を、四塩化炭素による肝傷害を与えたC57BL/6J-Ly-5.1マウスに輸注後、傷害肝内にEGFP陽性の肝星細胞が存在するかを検討した。評価は単位輸注細胞数(1×10^6細胞)当たりの肝臓内生着EGFP陽性細胞数で行ったところ、単球とT細胞を輸注されたマウスの肝臓組織内では比較的多くのEGFP陽性細胞の生着が確認されたが、B細胞と好中球を輸注されたマウス肝臓組織内では生着細胞数は少なかった。その生着したEGFP陽性細胞中のCD45陰性細胞の割合は、単球を輸注したマウスでは30%であったが、好中球、B細胞、T細胞を移植したマウスでは全く検出されなかった。Ly-6C^<high>c-kitの成熟単球だけでなく、Ly-6C^<low/-c>-kit^+の骨髄単球系前駆細胞が含まれる分画を輸注したマウスでもEGFP陽性CD45陰性細胞が認められた。これらの細胞は肝星細胞のマーカーであるvimentinとADAMTS13が陽性であり、肝星細胞と同定された。以上から、成熟単球と骨髄単球系前駆細胞は肝星細胞への分化能を有することが明らかとなった。
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