研究概要 |
1. Sema3Aの血小板機能抑制メカニズムに関する検討 昨年度までの検討において、Sema3Aにおいて認められた広範な血小板抑制効果は、PhospholipaseC系の抑制は関与せず、主にPI3 kinase系を抑制していることを明らかにした。本年度はADP刺激におけるSema3A抑制のメカニズムに関する検討を引き続き行った。ADPによるRap1活性化には血小板上の2種類のADP受容体P2Y1およびP2Y12が関与しており、それぞれの特異的な阻害剤を加えた条件でSema3Aの影響を検討したところ、よりPI3kinase特異的であると考えられるP2Y1阻害剤を加えた条件下ではRap1活性化の抑制効果がみられた。しかしながら、Sema3AのRap1に対する直接的な抑制効果は明らかすることはできなかった。一方、ADPによるAktのリン酸化においてはSema3Aの抑制効果が認められた。Rap1, AktともにPI3kinaseの下流に存在するシグナル伝達分子と考えらえているが、これらの結果から、Sema3Aは少なくともADP刺激下においては、Aktを特異的に阻害するメカニズムが存在する可能性を明らかにした。また、血小板の活性化には、活性化を惹起するシグナルと維持するシグナルが存在しており、これらを血小板インテグリンαIIbβ3活性化を認識するPAC1抗体を用いて区別する実験系を我々は確立しているが(Shiraga M et al. Blood 108, 1509, 2006)、これを用いて、Sema3Aの血小板機能抑制シグナルを検討した。PI3 kinaseはαIIbβ3活性化維持機構に関与すると考えられているが、我々はトロンビンおよびconvulxin刺激において、Sema3AはαIIbβ3の活性化惹起シグナルも抑制することを明らかにした。 2. Sema3Aの血栓形成および動脈硬化におよぼす影響に関する検討 Sema3A発現ベクターの改良を続けることにより、血栓モデルに対する検討を引き続き行った。ウイルスベクターの濃縮方法を改善することにより、培養細胞においてはSema3A発現を増加させる可能性が示された。またレーザー照射による血栓モデル手技の改善を行うことにより、Sema3Aの血栓形成抑制についての検討を行うことを可能とすることができた。
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