研究概要 |
本年度の研究では、血小板に発現しているToll-like receptor(TLR)の活性化によってもたらされるインテグリン機能の変化とその臨床的意義こついて検討した。血小板にはTLR2,TLR4,TLR5,TKR7TLR8か発現しており、このうち、TLR4とTLR7は、各々のリガンドと結合することによって、血小板インテグリンαIIbβ3の活性化が誘発され、静的条件下での血小板粘春活性を増加させた、他方、TLRへのリガンド結合によっても血小板凝集は誘発されず、血小板粘着活性を選択的に増加させていることが考えられた。この血小板粘着活性の増強効果は、MAPキナービインヒビターによってキャンセルされたことから、MAPキナーゼを介したシグナルによってαIIbβ3の活性化が生じて、血小板粘着活性が亢進していることが示唆された。次いで、血小板TLR活性化の臨末的意義を調べるため、敗血症患渚の血清が血小板粘着反応に及ぼす影響について固層化フィブリノーゲンへの血小板粘着活性を測定したところ、敗血症患者血清は血小板粘着を亢進させる作用のあることがわかった。このことは血小板が様々な病原体と接触することでαIIbβ3が活性化され、血小板粘着性が高まることを示唆しており、血小板も自然免疫応答で何らかの役割を担っている可能性があることが推察された。 さらに、血小板インテグリンαIIbβ3の活性化機序についても検討しており、β3細胞内ドメインの膜近位部と遠位部に存在する特定のアミノ酸が細抱内蛋白talinと相互作用することによって、αIIbβ3の活性化を引き起こしていることを明らかにして報告した。
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