本年度の研究では、 血小板TLR活性化の臨床的意義を調べるため、敗血症患者の血清が血小板粘着反応に及ぼす影響について固層化フィブリノーゲンへの血小板粘着活性を測定したところ、敗血症患者血清は血小板粘着を亢進させる作用のあることがわかった。さらに、この粘着活性は抗TLR4抗体で抑制された。このことは血小板上に発現されているTLR4が病原体と接触することでαIIbβ3が活性化され、血小板粘着性が高まることを示唆しており、血小板も自然免疫応答で何らかの役割を担っている可能性があることが推察された。 さらに、血小板インテグリンαIIbβ3の活性化機序についても検討しており、β3細胞内ドメインの膜近位部と遠位部に存在する特定のアミノ酸が細胞内蛋白talinと相互作用することによつて、αIIbβ3の活性化を引き起こしていることを明らかにして報告した。 次いで、抗血小板済であるシロスタゾールの薬効を測定する新たな方法を開発した。これは、血小板内蛋白であるVASP(vasodilator stimulated phosphoprotein)のリン酸化をフローサイトメーターで検出する方法で、血小板凝集計を用いて凝集抑制効果を検出する標準的な方法よりもはるかに感度が高かった。また、私どもが開発したアッセイによる測定は、数時間以内に完了し、特別な熟練を要しないので、これまで行われてきた免疫ブロッティング法に比し、臨床応用が容易であるという特徴を有していた。実際に、脳梗塞のためシロスタゾールを服用している患者で測定を行い、薬効をモニターすることができた。
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