研究課題/領域番号 |
20591156
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
麦島 秀雄 日本大学, 医学部, 教授 (80183648)
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研究分担者 |
松本 太郎 日本大学, 医学部, 教授 (50366580)
石毛 美夏 日本大学, 医学部, 助教 (90420950)
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キーワード | 造血幹細胞 / 臍帯血移植 / 脱分化脂肪細胞 / GVHD / 生着不全 |
研究概要 |
ヒト臍帯血造血幹細胞を増殖維持することができるマウスストローマ細胞(HESS5)に種々の線量の放射線照射を行い、発現するサイトカインの変化などを評価した。その結果、骨髄破壊的処置に使用する線量である10-20Gyの線量を照射した場合、造血幹細胞のホーミング因子であるSDF-1の発現・分泌が有意に低下することをmRNAレベルおよび蛋白レベルで明らかにした。そこで、HESS5に種々の線量の放射線照射を行った後、その培養上清を採取し、マイクロケモタキシスチャンバーを用いて、この培養上清の臍帯血単核球に対する細胞遊走能を検討した。その結果、10-20Gyの放射線照射を行ったHESS5培養上清では、放射線照射を行わないHESS5培養上清に比べて有意に臍帯血単核球の遊走能が低下した。これらの検討により放射線による骨髄破壊的処置により、造血微小環境からのSDF-1分泌が低下し、造血幹細胞のホーミングが抑制されることが生着不全の主因であることが明らかになった。 造血幹細胞の生着を促進させる移植用細胞をスクリーニングする目的で、ヒト脱分化脂肪細胞、ヒト皮膚線維芽細胞およびヒト脂肪組織由来幹細胞(ASC)を培養し、培養上清中のSDF-1をELISA法にて測定した。その結果、ヒト脱分化脂肪細胞は他の細胞に比べて明らかにSDF-1を高分泌していることが明らかになった。また脱分化脂肪細胞の免疫抑制能(GVHD予防作用)を評価するため、脱分化脂肪細胞とマウス脾臓リンパ球との共培養を行い、レクチン刺激によるTリンパ球増殖に対する効果を検討した。その結果、脱分化脂肪細胞は骨髄間葉系幹細胞と同程度のリンパ球増殖抑制効果があることが明らかになった。今後、ヒト造血幹細胞を移植したモデル動物に対して、脱分化脂肪細胞を移植する実験などを行い、生着率増加効果やGVHD予防効果を評価していく予定である。
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