研究概要 |
RasGRP1 (Ras guanyl nucleotide-releasing protein 1)は、非活性型Rasを活性型Rasに変換するRasの活性化因子であり、中枢神経系およびT細胞に発現する。後者においてはT細胞レセプター刺激の下流でRas/Erk経路を活性化、IL-2産生を亢進させることが知られている。RasGRP1欠損マウスでは胸腺double negative細胞におけるRasの活性化は障害されていなかったが、T細胞の成熟障害による著しいsingle positive細胞の減少が観察された。全身性エリテマトーデス(SLE ; Systemic Lupus Erythematosus)患者におけるRasGRP1の発現に関する我々の検討では、患者末梢血においてRasGRP1スプライス異常が高頻度であることおよびスプライス異常に伴う正常蛋白発現の低下を認め、報告した(S Yasuda et.al., J Immunol 2007)。 異常RasGRP1 RNAが正常RasGRP1の発現をdominant-negativeにコントロールする可能性を考慮し、内因性にRasGRP1を発現するJurkat細胞にRasGRP1スプライスバリアントをコードするベクターをレトロウイルスの系を用いてトランスフェクションし、抗生剤を用いてクローニングを行っており、今後正常RasGRP1の発現量やT細胞レセプター刺激後のRas経路の活性化について検討する。in vivoにおける検討として、タグ付きRasGRP1スプライスバリアント(RasGRP1 splice variant A-V5)をT細胞特異的に発現するトランスジェニックマウスを作製した。C57BL6マウスを背景に,現在3系統に遺伝子導入を確認した。うち1系統において、胸腺におけるRasGRP1 splice variant A-V5の蛋白発現を確認し得た。現在、胸腺におけるdouble positive, single positive細胞のポピュレーションを検討している。
|