TNF-αは強力な炎症惹起作用を有するサイトカインであり、関節リウマチやクローン病をはじめとした慢性の炎症性疾患においてきわめて重要な役割を果たしていることが明らかにされてきた。このサイトカインの生物学的作用を詳細に検討することは、慢性炎症性疾患の病態の解明と、新たな治療法の開発に意義が大きいと考えられる。 TNF-αの作用として、従来は可溶型TNF-αがその受容体に結合して標的細胞に作用するという機序が重要であると考えられてきた。しかしながら近年その前駆体である膜型TNF-αの作用が注目されている。しかも膜型TNF-αの作用はリガンドとしての作用と逆にそれ自身がシグナルを受け取る受容体としての作用の2方向性であることを我々は提唱し、研究成果をあげてきた。我々は膜型TNF-αがT-B細胞間の細胞接着による免疫応答に重要な分子であることを初めて明らかにしてきた。すなわち活性化T細胞上の膜型TNF-αはi) B細胞に接着して抗体産生を誘導し、ii)膜型TNF-αが刺激を受けることによりT細胞自身がある種の接着分子やサイトカインの産生を誘導する。本研究の目的は、膜型TNF-αとその受容体(TNF-α受容体)の二つの分子に着目して、それぞれについて機能解析、シグナル伝達機構を明らかにすることにある。平成21年度は膜型TNF-αの受容体としての作用に関わる「内向きシグナル」に関わる分子について、Affimetrix社製のcDNAアレイを用いて検討した。その結果、膜型TNF-αをインフリキシマブで刺激すると、約百数十分子の転写が亢進し、逆に約80分子の転写が低下した。その中で統計学的に有意差が大きい約20分子については定量的RT-PCRにて確認した。細胞周期や増殖に関連する分子が、膜型TNF-αの機能に関与することが明らかになった。
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