これまでにLECT2遺伝子欠損マウスを用いてLECT2が関節炎の抑制に関与することが明らかとなった。その抑制作用のメカニズムを知るためにマウス抗II型コラーゲン抗体誘導性関節炎の系を用いマイクロアレイにより遺伝子発現について調べた。LECT2遺伝子欠損マウス(BALB/c背景)に惹起し、抗II型コラーゲン抗体投与後経時的(5日後)に野生型、遺伝子欠損マウスそれぞれ6匹の関節局所の全RNAを調製し、アジレント社マウスcDNAマイクロアレイ解析に供した。統計的に優位差をもち1.5倍以上の変化を示した遺伝子を同定し、それを元にpathway解析をした。前年度までに関節リウマチ発症および進行に関与するヒト滑膜細胞に対してヒト組換え体LECT2を作用させ、刺激前後の全RNAを調製後、マイクロアレイを用いて変化する遺伝子を特定していたので、それと比較しケモカインを初めとする遺伝子発現パターンが共通するいくつかの遺伝子を見出した。さらにそれを確かめるために正常人由来、リウマチ患者由来滑膜細胞に組換え体LECT2を作用させ、real-time PCRにて定量的解析を行いそれら遺伝子の変化について確認した。また、関節炎が発症している滑膜組織では、滑膜細胞と浸潤したモノサイトの相互作用により産生される各種サイトカインが関節炎の発症、進行に関与することが報告されている。そこでin vitroでヒト滑膜細胞とヒト単球細胞等血球細胞を共培養し、そこにヒト組換え体LECT2を作用させ、各種サイトカイン産生について解析したが、LECT2処理により差のあるサイトカインは見つからなかった。
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