炎症や免疫応答の制御において、組織局所の酸素分圧の役割が注目されている。申請者は、活性化リンパ球やマクロファージの機能制御に、低酸素応答性転写因子(HIF)が密接に関与する事を見いだし、HIFを標的とした抗炎症療法の開発を目指してきた。薬剤によるHIF発現制御に加え、内因性HF機能抑制分子IPASを用いたHIF機能抑制の炎症細胞機能制御、炎症性血管新生制御における有用性を明確にしつつある。最近、申請者は、IPAS遺伝子のプロモーター構造、IPAS mRNAスプライシング制御機構を明らかにし、人為的IPAS発現制御/HIF機能抑制法の開発の突破口を見いだした。本研究は、免疫系細胞機能制御におけるHIF-1およびHIF-1-IPAs相互作用をはじめとする低酸素シグナルの役割を明確にするとともに、低酸素応答装置を標的とする新たな抗炎症療法、免疫制御法開発の基盤を確立することを目的として展開された。 平成20年度は以下の成果が得られた。 1) 免疫細胞におけるHIF-1α発現制御機構の解析 本研究では、免疫細胞におけるHIF-1α発現制御の分子機構の解明をめざした。 (1) 免疫細胞におけるHIF-1α遺伝子、蛋白発現とその制御機構の解析 : 単球系細胞におけるHIF-1α蛋白質の発現にはマクロファージへの分化課程が密接に関わる事を明らかにした。 (2) 疾患モデル動物におけるHIF-1α発現の解析 : コラーゲン誘発関節炎モデルにおいてHIF-1発現の増強を認めた 2) 免疫細胞におけるHIF-1αシステムの人為的調節と疾患治療の試み (1) 抗HIF-1分子IPAsの発現誘導によるHIF-1機能抑制法の確立 : IPAS高発現マウスにおいてはコラーゲン誘導関節炎の重症度、発症頻度いずれも抑制された。
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