炎症や免疫応答の制御において、組織局所の酸素分圧の役割が注目されている。申請者は、活性化リンパ球やマクロファージの機能制御に、低酸素応答性転写因子(HIF)が密接に関与する事を見いだし、HIFを標的とした抗炎症療法の開発を目指してきた。薬剤によるHIF発現制御に加え、内因性HIF機能抑制分子IPASを用いたHIF機能抑制の炎症細胞機能制御、炎症性血管新生制御における有用性を明確にしつつある。最近、申請者は、IPAS遺伝子のプロモーター構造、IPAS mRNAスプライシング制御機構を明らかにし、人為的IPAS発現制御/HIF機能抑制法の開発の突破口を見いだした。本研究は、免疫系細胞機能制御におけるHIF-1およびHIF-1-IPAS相互作用をはじめとする低酸素シグナルの役割を明確にするとともに、低酸素応答装置を標的とする新たな抗炎症療法、免疫制御法開発の基盤を確立することを目的として展開された。平成21年度は以下の成果が得られた。 1)免疫細胞におけるHIF-1α発現制御機構の解析 本研究では、免疫細胞におけるHIF-1α発現制御の分子機構の解明をめざした。 (1)免疫細胞におけるHIF-1α遺伝子、蛋白発現とその制御機構の解析:単球系細胞におけるHIF-1α蛋白質の発現には、糖濃度など低酸素以外の細胞外刺激が重要な役割を果たしていた。グルコース応答性転写因子ChREBPはHIF-1aのmRNAを誘導し、HIF-1α発現制御に関わっていた。 2)免疫細胞におけるHIF-1αシステムの人為的調節と疾患治療の試み (1)ChREBP発現抑制細胞ではHIF-1標的遺伝子の発現が抑制された。
|