研究概要 |
重症の難治性喘息の基礎病態である慢性気道炎症のプロファイルに関連して、誘発喀痰と呼気濃縮液、ならびにin vitroでの炎症細胞の組織浸潤・活性化実験システムを連動的に用い、下記の知見を得た。まず誘発喀痰をもちいた研究において、重症喘息患者では気道における好中球遊走性因子の代表であるCXCケモカインのうち、IL-8産生のみが有意に亢進していることが確認された。一方で、他のCXCケモカインであるENA-78、GRO-αは増加していなかった。さらに、好酸球遊走活性を有するEotaxin産生は有意に抑制されていた。重症喘息患者における喘息治療・管理向上のためには、従前の吸入ステロイドに加え、IL-8あるいは好中球を標的とした薬物の併用療法等も考慮すべきであることが示唆される。呼気凝縮液を用いた基礎的検討において、喘息の有無にかかわらず、これらのケモカインは十分に定量ができなかった。一方でTXB2,ロイコトリエンなどの脂質メデイエーターは検出できることが確認でき、次年度以降に重症度別の検討を行う予定である。一方でin vitroでの炎症細胞の組織浸潤システムをもちいての検討で、重症喘息気道組織での増加が指摘されているIFN群をもちいて、他の内皮細胞活性化因子であるTNF-αの共存下で血管内皮細胞をIFN群で刺激すると、かかる血管内皮細胞においてはヒト好酸球の接着誘導能力が有意に増強することを観察した。かかる好酸球接着の増強には主として血管内皮細胞のVCAM-1あるいはICAM-1などの免疫グロブリンスーパーファミリイに属する接着分子群の発現増強が寄与することが確認された。これは重症喘息でみられる好酸球組織浸潤機構のメカニズムのひとつであることが想定された。
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