研究概要 |
自己免疫疾患においては、本来外敵からの防御に作用すべき免疫担当細胞が、逆に自己を障害するエフェクター細胞として作用している可能性が示唆されており、全身性リウマチ性疾患においても、これら細胞群が最終的な組織傷害に深く関わっている事が明らかとなっている。我々が報告したシェーグレン症候群による唾液腺上皮障害(J Immunol 163:2226,1999)のみならず、最近、皮膚筋炎の間質性肺胞上皮障害などにもこれら細胞群が関与している事が示され、自己免疫性上皮障害という疾患概念が提唱されている。上皮内に存在して上皮障害に関与する上皮内リンパ球は、主としてCD8T細胞で、その表面には特異なインテグリン接着分子aEb7が発現され、上皮細胞に存在するE-カドヘリンとの接着を介し、最終的な上皮障害を惹起する可能性が指摘されている。しかしながら、その分子機構などの詳細は不明であった。そこで、自己免疫性上皮障害の分子機序を、リンパ球-上皮細胞のヘテロ接着に関与するaEb7-E-カドヘリンに着目して解析し、この接着を効率よく制御し、治療応用に結びつけるための基礎的検討を行うことを目的とした。a_Eb_7はEカドヘリンをリガンドとして上皮細胞に接着し、障害性T細胞の局在を保持する。そこで、a_Eb_7/Eカドヘリン(異種接着)の阻害は上皮障害の有効な治療法となる可能性があるが、Eカドヘリンは上皮細胞間の同種接着分子としての役割があり、阻害は異種にのみ選択的であることが望まれる。本研究によって異種特異的接着はEカドヘリンのドメイン5を介する事、T細胞上のa_Eb_7の発現は、PHA+TGFbが必須で、CD4+ならびにCD8+の両サブセットの存在下で最も効率良く誘導される事が明らかにされた。
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