研究概要 |
本年度は,平成20度の成績に基づき,(A)新たな筋炎と関連する自己抗体の追究,(B)新たな抗SRP抗体測定法の開発を行った. 【目的】炎症性筋疾患における自己免疫異常を検討するために,(A)新たな筋炎と関連する自己抗体の追究,(B)新たな抗SRP抗体測定法を開発,を目的とした.【方法】対象:膠原病患者16,000例,(抗SRP抗体測定法の開発では,とくにRNA免疫沈降法で7SL-RNAと反応した抗SRP抗体陽性18例)を対象とした.(A)自己抗体:HeLa細胞抽出物を用いた,核酸成分とタンパク成分の免疫沈降法により,同定した.(B)1)リコンビナントSRP-54kDa蛋白を抗原とした酵素免疫測定法(SRP-Elia),免疫ブロット法により,抗SRP抗体を測定した.2)SRP-Eliaによる抗SRP抗体陽性例の臨床特徴,HLAクラスII遺伝子を検討した.【結果】(A)既知の抗アミノアシルtRNA合成酵素抗体と異なるtRNA成分と48kDaタンパクを免疫沈降する自己抗体が多発性筋炎と全身性エリテマトーデス患者血清中に見出された.(B)1)7SL-RNAを沈降した全18血清が,SRP-Elia法で高力価陽性を示し,免疫ブロット法でも確認された.2)16例中14例(89%)が筋炎を持ち,14例中9例(64%)がステロイド療法抵抗性筋炎であった.3)免疫遺伝学的背景の検討では、DR8(DRB1*0802/*0803)が健常人に比し,高頻度であった.【結語】(A)新たなtRNA関連自己抗体が見出された.今後,その免疫学的性状と臨床的特徴の検討が課題である.(B)新たなSRP-Eliaは,簡便なスクリーニング検査に適していると考えられた.さらに,ステロイド療法抵抗性の壊死性筋炎サブセットを形成する症例を同定し,その臨床的有用性が示された.
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