初年度である本年度は培養の至適濃度およびRNA回収の至適時間を検索するための予備実験を行い、その後、活性化好酸球の網羅的な遺伝子発現解析(Microarray解析)の本実験を行った。 1.好酸球は活性化に伴い細胞毒性の強い顆粒蛋白を放出するため、脱顆粒に伴い細胞死が誘導される。また、好酸球顆粒蛋白自体に強いRNAse活性が存在するため、短時間の刺激では活性化による遺伝子発現誘導が不十分となり、一方長時間の刺激では細胞死やRNA収量の低下が認められる。これらのことから、好酸球を活性化する刺激としてGM-CSF、IL-5、IFN-γ、secretory IgA、などの刺激を行いその後の生存率とRNAの収量などから刺激6時間後にTotal RNAを回収することとし、また刺激の指摘条件を確定した。 2.複数のドナーから400ml以下の採血を行い、抗CD16抗体結合immunomagnetic beadsによって99%の純度で好酸球を単離し、活性化後に好酸球の網羅的な遺伝子発現解析(Microarray解析)の本実験を行った。 3.その結果をClustering解析などによって候補遺伝子群の絞り込みを行い、刺激によって好酸球に発現誘導され、かつ他の血球細胞に発現していない分子群を抽出した。 4.これらの分子群の遺伝子情報やOntology情報を元に機能的にアレルギー性炎症病態に関与していることが推察される分子として、まずAmphiregulin(AREG)に着目し、各種サイトカインの刺激後に誘導されるAREGのmRNA発現を測定し、上清中の蛋白をELISAで定量した。その結果、GM-CSF刺激によって好酸球が有意にAmphiregulinを産生放出することが明らかとなった。
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