Clostridium difficileは病院内で発生する下痢症において、もっとも頻度の高い原因菌である。細菌の鞭毛の一成分であるフラジェリンがToll-like receptor 5(TLR5)で認識され、細菌の腸管感染における免疫応答に重要な働きを演じていることが報告されているが、C.difficileに存在するフラジェリンの病態発症における役割は不明であり、本研究ではこれを解明する目的で以下の解析を行った。 トキシンを産生しないC.dfficile株をATCCより購入後、嫌気性環境にて液体培地で培養し、その後菌体を除去した上澄み液を高速遠沈することで、39kDaのフラジェリンを抽出した。TLR5を有する腸管上皮細胞系のCaco-2およびHT29細胞へC.difficileから抽出したフラジェリン刺激を加えると、IL-8やCCL-20の産生の亢進がELISA法にて確認された。またhuman TLR5を強制発現させたHEK293T細胞へ同様にC.difficileから抽出したフラジェリン刺激を加えると、Dualluciferase Assayを用いて検証したNF-κBの活性上昇が認められた。 以上から、C.difficileフラジェリンが、腸管における免疫賦活化を引き起こす可能性が強く示唆された。C.difficileトキシンが、C.difficile関連疾患における病原性に強く関連すると考えられていることから、今後はフラジェリンとトキシンの共存在下での病態発現機序について検証を進める予定である。
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