研究概要 |
貪食した好中球が産生する活性酸素は、生体内に侵入した病原微生物に対する生体防御に重要な役割を果たしている。抗体の触媒作用により、ヒト好中球が一重項酸素からオゾンを産生し、このオゾンが殺菌作用に寄与していることが報告されていた(Science 298,2195-9,2002,PNAS 100,3031-4,2003)が、その詳細については明らかでなかった。本研究において、先ず我々は、我々が独自に開発した一重項酸素を特異的に産生する無細胞系を用いて、Trp,Met,His,Cysの4種アミノ酸が、抗体と同様に、一重項酸素からオゾン産生を触媒する作用を有することを明らかにした。次に、活性酸素産生酵素(NADPHオキシダーゼ)の先天的異常を認める特殊な慢性肉芽腫症患者の好中球を用いることにより、ヒト好中球においてオゾンが産生されることを確認した。そして、これらアミノ酸の触媒作用により産生したオゾンが、この無細胞系あるいはヒト好中球において、大腸菌や腸球菌などの細菌に対する殺菌に寄与することを明らかにした。この殺菌増強作用は、ヒト好中球が高用量(5-10倍)の細菌に暴露されたときに顕著であった。これらの所見は、特に高用量の病原体に暴露されたときの生体防御系において、好中球が産生するオゾンが殺菌能を増強する可能性を示唆するものであり、好中球の殺菌作用に関して新たな生物学的洞察を与えるものと考えられた。上記の研究成果は、PNAS 105,16912-7,2008に発表した。
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