研究概要 |
昨年に引き続きGFP-cPLA_2発現ベクターのマクロファージ・CHO細胞株への導入を行った。RAW264.7マクロファージ細胞への,野生型cPLA_2-EGFP発現ベクターの導入は,十分なレベルの発現を得ることは出来なかった。そこで,GFPタンパクの発現に適したCHO-K1細胞を用いて,この細胞に野生型cPLA_2-EGFP発現ベクターを導入に,共焦点レーザー顕微鏡にて観察を行ったところ,cPLA_2-EGFP発現ベクター導入CHO-K1細胞においてcPLA_2-EGFPの発現が確認された。この細胞では,10mM ionomycin単独,または10mM ionomycin +1mM CaCl_2の刺激により,cPLA_2-EGFP蛋白の核膜周辺への移行が観察された。 さらに,アポトーシスをマクロファージに誘導する実験系の確立を試みた。アポトーシス誘導剤として,etoposide,ATP,TNF-α,Fas ligand,a-(tri-chloromethyl)-4-pyridineethanol(PETCM)およびforskolinを用いて,J774.1マクロファージにアポトーシスが誘導されるか否かについて検討したところ,マクロファージをetoposide存在下で48時間培養することにより,アポトーシスが誘導されることが分かったが,この場合,etoposide処理マクロファージにはアポトーシスに連動した形でのM.smegmatis殺菌作用が認められた。これまでのMACを用いた実験では,ATPによる宿主マクロファージのアポトーシスの誘導と細胞内MACに対するマクロファージ殺菌能の増強作用との間の連動性を検証することは困難であったが,zymosan A誘導マウス腹腔マクロファージをATP存在化で一定時間培養することにより,アポトーシスの経時的な誘導に連動して,マクロファージのM.smegmatis殺菌能が増強していくことが明らかになった。このモデル実験系は,今後,アポトーシスに連動したマクロファージ殺菌能の増強と言う現象にcPLA_2がどのような形で関与しているのかについて検討を進める上で,非常に有用と考えられた。
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