研究課題
バクテリオファージ(ファージ)の溶菌活性を利用するピロリ菌の除菌法、いわゆるファージ療法の開発を目指し報告者らが分離に成功した、新規ファージφHP33について性状解析を行なった。(1)塩化セシウム密度勾配超遠心法によりファージ粒子を精製し、形態を電子顕微鏡により検討したところ直径約60nmの尾部を有しない球形のファージであった。外殻の中にコア構造があり、クロロホルムに感受性を有することから、脂質を含有すると予想された。(2)ファージ粒子から核酸を抽出解析した結果、ファージゲノムは2本鎖DNAであった。塩基配列の解読の結果、ゲノムサイズは約26kbpで28個のORFが確認された。その内ORF13は、ファージ蛋白質のN末端アミノ酸配列解析との比較から、ビリオン蛋白質遺伝子であることが特定された。ゲノム構成から、本ファージは新しいウイルス科を形成する可能性が示唆された。(3)安定性は非常に高く、ファージ溶菌液中のファージの活性は、4℃6ヶ月保存後でも殆ど変化しなかった。(4)臨床分離のピロリ菌40株について宿主域をプラーク形成により検討した。その結果、63%の菌株でプラークを形成でき、比較的広宿主域であることが示された。(5)φHP33の液体培地での溶菌活性を検討した。菌液に高濃度のファージを添加した場合、菌増殖の完全抑制が認められた。一方、ファージ希釈液を使用した実験では、濃度依存的な溶菌活性が認められた。溶菌活性は低濃度でも見られることから、本ファージは極めて強力なピロリ菌溶菌活性を有すると考えられた。以上から、φHP33は比較的小さなビリオンおよびゲノムを保有し、広宿主域であり、ピロリ菌に対し強い溶菌活性を保有することが明らかとなり、ピロリ菌感染症に対するファージ療法の有効性検討のための優れたツールになると期待される。
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