研究概要 |
昨年に引き続き,潰瘍性大腸炎患者を抗菌薬投与群と非投与群に分けて治療前後での大腸粘膜(虫垂,盲腸,上行結腸,横行結腸,下降結腸,S状結腸,直腸)の細菌のDNAを採取し,制限酵素Hha1とMsp1で切断して,Terminal Restriction Fragment Length Polymorphism Analysis(T-RFLP)法にて細菌叢のパターンを調べたところ、抗菌剤投与群ではある塩基長(Hha1 1000bp, Hha1 100~200bpとMsp1 100~200bpで治療後にピークの低下を認めたが、非投与群のT-RFLPでは治療前後で差を認めなかった。そのピークの低下を認めた塩基長について,クローニングを行い,それに該当する細菌種を同定した。また、われわれが注目している腸内細菌のFusobacterium variumについて、その治療前後の推移を特異的PCR法によって解析し、抗菌薬投与群で減少または消失していることを確認した。 以上に加えて、粘膜からRNAを採取して、2例のメタゲノム解析を行い、上記のFusobacterium variumとそれ以外の細菌について検索した。抗菌薬多剤併用ATM療法を行い、3カ月後までに緩解になり12ヶ月後まで緩解が持続した症例では、Bacteroidaceae, Acidaminococcus, Prevotella, Parabacteroidesなどが著明に減少していることがわかった。それに対して偽薬投与群では粘膜細菌数の減少・増加は認められなかった。また、Fusobacteriaについては、治療前より多く検出されていなかったこともあり、比較はできなかった。まとめると、抗菌薬多剤併用療法で粘膜細菌が減少することが証明された。
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