研究概要 |
OTX2遺伝子の異常をin vitroでさらに解析した。その結果変異OTX2のGnRHプロモーター活性増強作用は野生型に比較して低下していた。したがって、OTX2はGnRHニューロンの活性あるいは遊走を障害し、中枢性性腺機能低下を引き起こす可能性を示唆した。 中枢性性腺機能低下症の成因は様々であるが、CHARGE症候群が疑われた5例中3例にその責任遺伝子であるCHD7の変異を同定した。さらに副腎低形成に中枢性性腺機能低下症を合併した1成人例においてはX連鎖性副腎低形成症の責任遺伝子であるDAX-1遺伝子にミスセンス変異(L466Rを同定した。野生型DAX-1はin vitroでラットLHβサブユニット遺伝子のEgr-1による転写促進作用を抑制する。しかし、この変異DAX-1はその抑制作用を喪失していた。従ってDAX-1異常による中枢性性腺機能低下のメカニズムの一因を明らかにすることができた。 さらに継続的に複合型下垂体前葉ホルモン欠損症(CPHD)の成因をPROP1,OTX2,LIIX3,LHX4,HESX1,SOX2、GLI2をターゲットに、さらに15例解析した。このなかで片側の視神経の形成不全を持つ患者でGLI2遺伝子のイントロンの1塩基置換を同定した。この患者では透明中隔欠損も伴っておりSepto-Optic-Dysplasia(SOD)と診断した。GLI2はSonlg Hedgehogシグナルの下流に存在する転写因子で、中枢神経の発達に重要な役割を果たす。現在この変異がもたらす機能変化をin vitroで検討し、CPHDの関連について明らかにしようとしている。SODの原因はいまだ完全には解明されていないが、GLI2の異常がその一つである可能性を示唆している。 このようなCPHDの分子遺伝学的検討を行うことは1)視床下部-下垂体の発生の仕組みを理解すること、2)中枢性性腺機能低下症の原因の解明、3)中枢神経系の発達の異常を解明する手掛かりになりえる。
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