小児期にビタミンDが不足すると、乳児けいれん、O脚、低身長、発達障害などを呈するビタミンD欠乏症を発症する。近年世界的にビタミンD欠乏症が増加していることが注目されている。その原因は、主に紫外線不足や栄養など環境因子によると考えられている。我々は本疾患発症には遺伝性素因の関与もあると考え、本研究では、ビタミンD欠乏症の疾患感受性遺伝子を同定することを目的とした。まず、全国からビタミンD欠乏性くる病と診断された症例の集積を行った。それらの施設に研究協力を依頼し、倫理審査の上、同意が得られた症例の検体を集めた。臨床情報は各担当医に依頼し、シートに記入してもらい集積した。症例のゲノムDNAを取得し、骨代謝関連遺伝子の遺伝子多型を正常対照と比較して解析した。候補遺伝子の選定に際しては、ビタミンDの生体内活性化、輸送、受容体とその後のシグナル伝達機構に関与するものを選び、解析を行った。また、近年のゲノムワイド関連解析により血中ビタミンD濃度との関連が報告された遺伝子多型について解析を行った。その結果、ビタミンD受容体が、本疾患の疾患感受性遺伝子である可能性を見いだした。さらに、ビタミンD結合蛋白とNAD合成酵素の多型についても疾患群と対象群に有意差がみられた。25水酸化酵素については全遺伝子解析を施行した。その結果、25水酸化酵素の翻訳調節領域に一塩基置換を認めた。この塩基置換があった症例は、臨床的に治療抵抗性である特徴を有することから、本遺伝子置換が遺伝的背景として関与している可能性が示唆された。このように、本研究により環境因子によると考えられていたビタミンD欠乏症の発症には、遺伝因子の関与があることが示唆された。今後さらに関連性を明らかにしていくことにより、ビタミンD欠乏症のみならず関連する糖尿病など多くの疾患の予防につながると考える。
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