研究課題
脳性まひの原因として最も重要な早産未熟児の脳障害の主要な原因である脳室周囲白質軟化症(PVL)について、炎症機転による小動物モデルを作成することができた。ヒトPVLについては、感染の関与を支持する臨床データが得られており、大腸菌由来のリボ多糖を用いてラットにて絨毛羊膜炎モデルを作成し、中枢神経系の変化を検討した。胎児期に羊膜腔に投与する子宮内感染モデルと、新生仔の腹腔内に投与する新生児敗血症モデルの2つを作成した。投与後48時間後には、ヒトと同様に脳室周囲の白質に選択的に病変が認められた。白質の基質の菲簿化を伴いのう胞形成を認め、極めてヒトの病変に類似した組織像を呈した。病変部分には、早期にはマクロファージの局所の浸潤が認められ、軽度の軸索の変性を伴っていた。時間経過とともに、ミクログリアの活性化の所見などが出現し、最終的には大脳白質に選択的なグリオーシスの所見が認められた。こうした病理変化は、超未熟児などの未熟脳におけるヒトの病理像に合致しており、ヒトPVLの病態に感染炎症が関与していることが証明された。慢性期の病理所見では、大脳白質および錐体路の組織でのびまん性のグリオーシスが認められると共に、髄鞘形成に関連するミエリン塩基性蛋白などの低下を認めた。これはヒトPVLによる運動障害の機序に二次的な髄鞘化障害が関与していることを示す所見であった。感染が大脳白質を障害する機序は明かにされていなかったが、発達期の大脳白質が大腸菌由来のリポ多糖に非常に感受性が高い機序として、Toll-like receptorの発現を検討したところ、脳室周囲組織および脳室内の脈絡叢での強い発現を認め、病態生理に関与している可能性が考えられた。以上よりヒトのPVLの病態として感染炎症機転の重要性が示され、アストロサイトの活性化などグリア細胞による組織修復の機転が認められた。
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