研究概要 |
非誘導体化試料調製法によるタンデムマス・スクリーニングの精度を検討し,以下の成果を得た。(1)脂肪酸酸化異常症のスクリーニングにおいて、アシルカルニチン濃度比の指標のカットオフ値を設定したところ,特にCPT-2欠損症の診断に有用であった。(2)カルニチントランスポータ異常症スクリーニングで患児が発見され,遊離カルニチンのカットオフ値と腎での遊離カルニチンクリアランス値の有用性が確認できた。(3)短鎖ヒドロキシアシルCoA脱水素酵素欠損症が発見され、ヒドロキシC4アシルカルニチン/アセチルカルニチン比のカットオフ値の有用性が確認できた。(4)わが国で頻度が高いシトリン欠損症のタンデムマス・スクリーニングにおいて、シトルリン値にシトルリン/セリン比を加えた指標設定により,これまで見逃されていた患児が発見され,これらの指標の有用性が実証された。 また,グルタル酸尿症2型を含む脂肪酸酸化異常症に対して、より簡便で検査負担の少ない末梢細胞を用いた方法を二次検査法を開発し,既診断患者での分析を行ったところ,今後タンデムマス・スクリーニング陽性児への精密検査法として実施の可能性が示唆された。 有機酸代謝異常症でのタンデムマス・スクリーニング陽性者に対する精密検査法であるGC/MSによる有機酸分析において,汎用のデータ解析・診断用ソフトを開発でき,その有用性および精度に関しても実用的なレベルであることが確認できた。抗生剤服用によるイソ吉草酸血症偽陽性例に対する二次検査法が,イソ吉草酸血症新生児の重症度判定に極めて有用であることが判明した。また,濾紙血中メチルマロン酸濃度のGC/MS分析が,メチルマロン酸血症の二次検査法として有用であり,特に濾紙血迅速化学診断としても有意義であることが確認できた。以上の成果はタンデムマス・スクリーニングの精度向上や効率改善に大いに寄与すると考えられた。
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