研究課題
前年度に引き続き非誘導体化試料調製法によるタンデムマス・スクリーニングの精度を検討し,以下の成果を得た。(1)脂肪酸酸化異常症のスクリーニングでのアシルカルニチン濃度比の指標のカットオフ値は、CPT-2欠損症と共にMCAD欠損症など他の疾患の診断においても有用であった。また、確認検査として血清アシルカルニチン分析が必要であることも実証された。(2)カルニチントランスポータ異常症及び短鎖ヒドロキシアシルCoA脱水素酵素欠損症のスクリーニングでは、遺伝子検査による診断が有用であった。(3)多くの対象疾患で、濾紙血による再採血検査を経ないで直接精密検査とする必要性が指摘され、そのためのスクリーニング指標の基準値を暫定的に設定することが出来た。前年度から開発を進めてきた二次検査法のうち、GC/MS法による濾紙血中メチルマロン酸濃度測定は、特に重症型のメチルマロン酸血症患者の早期診断と早期治療の観点から極めて有用であることが明らかとなった。またプロピオン酸血症のスクリーニング指標のカットオフ値の改訂を組み合わせることにより、メチルマロン酸血症とプロピオン酸血症の重症度を考慮したスクリーニングが可能となることが示唆された。イソ吉草酸血症スクリーニングの二次検査法であるMS/MS濾紙血中イソバレリルグリシン総度測定により、本症のスクリーニング指標値の過小評価がカルニチン欠乏によっておこることが明らかとなり、適切な重症度評価と迅速な治療を行う上での有用性を示すことが出来た。脂肪酸酸化異常症に対する簡便な直接精密検査として末梢リンパ球を用いた脂肪酸酸化能検査法が有用であるかどうか,既診断患者において検討したところ,軽症型患者においても診断が可能であった。スクリーニングで陽性となった新生児に順次適用することでさらに診断精度の確認を行い、今後さらに実用検査として開発を進めることとなった。
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