Duchenne型筋ジストロフィー(以下DMD)において、筋分化に関与するMyoD、myogeninなどのシグナル伝達因子の動態が病態に関与していることが知られているが、近年、炎症・アポトーシスなど多彩な生命現象に関与するシグナル伝達因子であるNF-κBが筋細胞の壊死・再生に関与し病気の進行に大きな影響を与えていることが注目されている。一方、私達は、DMDに対する根治治療として、アンチセンスオリゴヌクレオチド(以下AS-oligo)によってエクソンスキッピングを誘導し、out-of-frame欠失をin-frame欠失に変えて遺伝情報を修正する治療法の有効性を、世界で初めて臨床的に明らかにした。しかし、このアンチセンス治療の臨床応用を広げるためには、その効果をさらに高めることが不可欠である。 本研究では、AS-oligo治療の過程におけるNF-κBを中心としたシグナル伝達因子の動態を明らかにする。DMDの治癒過程におけるNF-κBの役割を明らかにし、さらにこれらの因子を制御することによりアンチセンス治療の効果をさらに高めることが可能となる。 本年度は、エクソン45のスキッピング誘導によってout-of-frame欠失をin-frame欠失に変換可能なDMD症例の筋培養細胞初代培養系を確立し、エクソン45のスキッピングを誘導するAS-oligoによるジストロフィンの発現を検討した。その結果、エクソンスキッピングおよびジストロフィン蛋白発現に、症例により差がみられることが明らかになった。AS-oligoの有効性の差とNF-κBなどのシグナル伝達因子の動態との関連を検討している。
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