肝フェニルアラニン水酸化酵素(PAH)欠損に起因するフェニルケトン尿症(PKU)に対し、骨格筋にPAH遺伝子を導入してフェニルアラニンを代謝させるための基礎検討を行った。筋への遺伝子導には最も有望な自己相補型アデノ随伴ウイルス(scAAV)ベクターに搭載できるプロモータは、最大500bp程度である。そこで、小型の汎用プロモータとしてサイトメガロウイルスプロモータ(CMV)と翻訳延長因子I遺伝子コアプロモータ(EFS)を準備した。筋特異的発現を期待して、改変型筋クレアチンキナーゼ遺伝子エンハンサ(CKe)を同遺伝子のコアプロモータに1個(sMCK)または2個つないだもの(dMCK)、さらにCKeとEFSを組合せたハイブリッドプロモータ(sEFS)を作製した。これらのプロモータと、ヒト第IX因子(FIX)レポーター遺伝子をscAAV骨格に組込んで、発現ベクターを構築した。対照として、肝特異的プロモータ(LP1)を搭載したscAAVベクターを用いた。これらの発現ベクターを、ヒト腎由来の293細胞、肝癌由来のHuh7細胞、筋管細胞へ分化誘導可能なマウスC2C12細胞にトランスフェクトし、培養上清中のFIXをELISAならびにイムノブロットで、細胞中のFIXをイムノブロットで定量・半定量した。その結果、293細胞における活性はCMV>>その他、Huh7細胞にてはCMV>LP1>>その他で、ほぼ予想通りだった。一方、未分化C2C12細胞における発現はCMV>sEFS>>その他であったが、筋管細胞へと分化させるにつれてエンハンサ活性が顕著に現れ、分化誘導末期での発現はdMCK>sMCK>sEFS>CMV>>LP1となった。以上の結果から、scAAV/dMCK-PAHベクターによるPKUモデルマウスの治療実験へと進む予定である。
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