肝フェニルアラニン水酸化酵素(PAH)欠損に起因するフェニルケトン尿症(PKU)モデルマウスに対し、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを用いて骨格筋を標的とするin vivo遺伝子治療実験を行った。(1)PAH遺伝子搭載AAVベクターを2×10^<11>vector genomes(vg)雌PKUマウス3頭に筋注し、テトラヒドロビオプテリン(BH_4:PAHの補酵素)に反応して血中フェニルアラニン(Phe)が低下するか検討した。筋注1週後に31.3±3.4mg/dLから23.5±1.6mg/dL(p=0.023)、2週後には30.3±2.8mg/dLから22.7±2.9mg/dL(p=0.031)、5週後には29.1±2.2mg/dLから17.4±4.9mg/dL(p=0.020)へと軽度の低下をみたが、BH_4投与後のPhe絶対値は、ベクター筋注前(26.5±3.2mg/dL)と有意差がなかった。(2)PAH搭載ベクターに加え、BH 4合成系の2酵素(GTPシクロヒドラーゼI、6-ピルボイルテトラヒフォロプテリンシンターゼ)の遺伝子を搭載するAAVベクターを4×10^<11>vgずつPKUマウスに混合筋注し(雄4頭、雌7頭)、静止時の血中Pheを測定した。雄(治療前31.9±1.1mg/dL)・雌(治療前29.4±2.7mg/dL)とも治療後2週から血中Pheは有意に低下し、その効果は27週後も持続していた(雄17.3±1.4mg/dL : p=0.00014、雌22.2±3.4mg/dL : p=0.00087)。この治療系はPAHベクターの単独筋注より優れた効果をもたらしたが、血中Pheは目標の治療域(<10mg/dL)には達しなかった。本実験で用いたサイトメガロウイルスプロモータより高発現なものを使用する必要があると考えられた。
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