研究概要 |
本研究の目的は以下の3点である。 (1)単一遺伝子病による遺伝性CHの頻度を明らかにする。(2)多因子遺伝病、すなわち複数の遺伝子の相互作用(例えばdigenic変異;異なる2つの遺伝子の同時変異による発症)による遺伝性CHの存在の有無を明らかにする。および(3)変異が証明された各遺伝子において変異遺伝子の機能をin vitroで解明する。 平成21年度には以下の成果を得た。 (1)転写因子の異常による単一遺伝子病としての遺伝性CHの頻度を明らかにした。すなわち、(1)本邦におけるヘテロ接合性PAX8変異の有病率はCHの2.0%、一般人口の1/176,000である。(2)本邦におけるPAX8変異以外の転写因子(TTF-1,TTF-2,NKX2-5)の異常による単一遺伝子病としての遺伝性CHは稀である(いずれも現時点では存在を証明できていない)。 (2)変異の可能性のあるTTF-1遺伝子の機能をin vitroで解析する系を確立した。すなわち、TTF-1結合領域を有するサイログロブリンプロモーターを用いたルシフェラーゼアッセイである。この系を用いて、H60W TTF-1は変異ではなく、稀なシークエンスバリエーションであることを証明した。 (3)変異の可能性のあるPAX8遺伝子の機能をin vitroで解析する系を確立した。すなわち、GFP-PAX8融合遺伝子を用いたPAX8蛋白の細胞内局在アッセイ、PAX8結合DNA配列を用いたゲルシフトアッセイ、PAX8結合領域を有するサイログロブリンプロモーターを用いたルシフェラーゼアッセイ、である。これらの系によりPAX8c.238_252dupを解析した結果、変異PAX8は核内に移行するものの、DAN結合能および転写活性化能を欠如することを証明した。
|