研究概要 |
遺伝性酵素欠損症の一つであるライソゾーム蓄積症の中でも出生後早期に発症し急激な脱随による進行性神経症候を発現するGloboid Leukodystrophy(GLD, Krabbe disease)を研究対象とした。従来モデルマウスであるtwitcher mouseを用いた研究では中枢神経系に導入できても、機能生命予後の改善は思わしくないことも多く、原因として末梢神経系を含む多臓器細胞の不十分な遺伝子発現や免疫の関与も考慮されていた。今回我々はモデルマウスであるtwitcher mouseの新生児に対してレンチウイルスを改変したベクターにKrabbe病欠損酵素であるGALCを組込み、超遠心などを用いて十分に力価の高いウイルスベクターを準備して静脈注射により投与し(日齢1-2)、主に5週齢での脳、肝臓での酵素活性、サイコシン蓄積、ベクターコピーナンバー(real-time PCR)を検討した。その結果、中枢神経では有意差を持ってサイコシン蓄積が減少し(p=0.009)さらに5週齢でも脳、肝臓においてベクターコピーが同定された。(0.0050copy/cell, 0.0783copy/cell)表現型における効果として体重増加は4週齢までは有意差を持って改善され、寿命も未治療群と比較して有意に改善されたが(p=0.03)100目齢を超えるなどの劇的な改善は得られなかった。 さらに表現型の改善を期するため、基質合成阻害剤であるL-cycloserineを遺伝子治療群と組み合わせて日齢5より隔日で皮下注射することにより治療効果を同じ5週齢で検討したが、5週齢における体重や寿命は遺伝子治療単独群よりも更に改善が見られ、相乗効果が考えられた。
|