研究概要 |
リソゾーム酵素欠損症では、一般的に酵素補充療法の有効性が期待できるが神経変性を伴う疾患に対しては血液脳関門(BBB)の存在が大きな障害となり、有効な治療戦略が立てられていない。本研究では脳全体の広範な神経変性を伴う、異染性白質ジストロフィー(MLD)及びクラッベ病をモデルとして、脳神経組織に対する新しい骨髄移植法、およびそれを応用した遺伝子治療の開発を目的とする。近年、骨髄移植により移植した細胞が脳神経細胞へ分化されることは報告されているが、効率が悪いために治療効果が発揮されないことが問題となっている。我々はhomeobox transcriptional factor B4(HoxB4)発現骨髄細胞が骨髄幹細胞の増殖をもたらし、その結果移植による生着率の向上が可能である事を報告している(Miyake et al.,Stem cell2006)。本年度はHoxB4発現骨髄細胞の骨髄移植への有用性を脳全体の広範な神経変性を伴うMLDモデルマウスを使って検討を行った。5FU処理した正常マウスの大腿骨より骨髄細胞を採取し、レトロウイルスベクターにてHoxB4+GFPまたはコントロールとしてGFP遺伝子を導入し、致死量の放射線をかけたMLDモデルマウスに移植し、移植率及び脳神経細胞へ分化の率を検討した。コントロールと比較してHoxB4発現骨髄細胞を移植した群では高度の移植率を認めた。脳内においてもコントコールと比較して多数のGFP陽性細胞を認めた。HoxB4発現骨髄細胞を移植することにより効率を上昇でき、治療効果の上昇も期待された。今後、脳内GFP陽性細胞の同定を行っていくと共に治療効果の検討を行っていく予定である。
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