研究概要 |
Nesfatin-1は近年発見された摂食調節蛋白で視床下部では室傍核(PVN)、視索上核(SON)、弓状核(ARC)などに発現が認められる。Nesfatin-1の脳室内投与によりラットの摂食が抑制され、慢性投与では体重増加抑制と体脂肪減少が報告されており、新規の摂食抑制蛋白として注目されている。しかし生後発達過程での遺伝子発現動態については報告がない。今回我々はNesfatin-1の生後発達過程での生理作用を解明する目的で、生後発達過程の仔ラットを用いて視床下部におけるNesfatin-1遺伝子発現を検討した。【方法】妊娠後期のSprague-Dawleyラットを飼育し、出生した雄仔ラットの脳を1,8,15,22,40および60日目に摘出し(n=12)、凍結切片を作成した。視床下部PVN、SON、ARCでのNesfatin-1遺伝子発現をIn situハイブリダイゼーション法を用いて検討した。【結果】Nesfatin-1遺伝子の発現は、PVN、SONでは生後1日目では認められず、8日目から発現が認められた。22日まで一定の発現を認め思春期にあたる生後40日目以降は有意ではないが減少傾向が認められた。ARCでは生後1日目より認められ、40生日まで徐々に発現が増加した。【考察】PVN、SON、ARCにおけるNesfatin-1遺伝子発現は生後発達過程においてそれぞれ特異的な発現動態のパターンを呈し、それぞれの部位における生理作用に密接に関連している可能性がある。生後発達過程において、Nesfati-1はPVN、SON、ARCでそれぞれ異なった生理作用を有することが示唆される。
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