Galanin-like peptide (GALP)およびNeuromedin U (NMU)は摂食調節作用を有する新規の神経ペプチドとして注目されている。昨年度の報告書において生後発達過程における下垂体でのGALP及びNMUの遺伝子発現はそれぞれにおいて特異的な発現動態の変動を示すことが判明した。しかしどちらのペプチドも生後発達過程における下垂体での遺伝子発現調節機構などの詳細は不明である。本研究では発達過程での食餌の変化が及ぼす影響を明らかにするため、離乳前の時期での母乳制限が仔ラットの遺伝子発現に与える影響を検討した。【方法】妊娠後期のSpraque-Dawleyラットを飼育し、出生した仔ラットを7、14日目において24時間の母仔分離を行った(各日令雌雄6匹ずつ)。24時間後に下垂体を摘出し、凍結切片を作成した。GALPとNMU遺伝子の発現をS^<35>でRI標識した合成オリゴヌクレオチドプローブを用いたIn situハイブリダイゼーション法を用いて検討した。【結果】下垂体後葉(PP)でのGALP遺伝子の発現は、24時間の母仔分離により有意に増加した。下垂体前葉(AP)でのNMUの発現も24時間の母仔分離により有意に増加した。【考察】離乳までの時期での母乳制限は絶食および絶飲水負荷として知られている。生後早期の母乳制限によってPPでのGALP遺伝子の発現が増加したことによって、GALPは生後発達過程の早期から浸透圧調節や下垂体後葉ホルモン分泌などの生理作用に関与する可能性が示唆された。下垂体での生理作用の発達と密接に関連することが示唆された。また、24時間の母仔分離は新生児に対するストレス負荷のモデルとしても知られている。NMUも24時間の母仔分離により有意に増加したことにより、NMUは新生児期からのストレス反応の調節に関与していることが示唆された。
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