研究課題/領域番号 |
20591237
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研究機関 | 産業医科大学 |
研究代表者 |
上野 晋 産業医科大学, 医学部, 講師 (00279324)
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研究分担者 |
笛田 由紀子 産業医科大学, 産業保健学部, 助教 (10132482)
由比 友顕 産業医科大学, 医学部, 助教 (60330982)
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キーワード | フロン代替物質 / 1-ブロモプロパン / 胎児期曝露 / 次世代影響 / AMPA受容体 / Na^+チャネル / 海馬スライス標本 / 中枢神経毒性 |
研究概要 |
洗浄溶剤として汎用されているフロン代替物質の1-ブロモプロパン(以下1BP)については次世代に対する中枢神経学的影響が未だ明らかとされていない。本年度は1BPの胎仔期曝露モデル動物を作製し、生後14日齢における海馬神経回路の機能を評価した。 Wistar系のラットを交配させ、妊娠を確認した翌日から出産前日までの20日間、吸入曝露チャンバーを用いて1BPを濃度700ppmにて吸入曝露(6時間/日)させた(対照群として空気曝露を行った)。得られた産仔の生後14日齢に海馬よりスライス標本を作製し、電気刺激に対する海馬神経回路興奮性〜興奮性シナプス後場電位(fEPSP)および集合スパイク電位(PS)〜を電気生理学的に解析して対照群と比較検討した。さらに海馬でのAMPA型グルタミン酸受容体サブユニット、ならびに電位依存性Na^+チャネルサブユニットの遺伝子発現についてreal-time RT-PCR法により解析した。 電気生理学的解析から、1BP胎仔期曝露ラットでは海馬CA1領域でのfEPSPならびにPSの刺激応答性が対照群と比較し有意に増強していた。さらにfEPSPと関連するGluR1 AMPA受容体サブユニット、PSと関連するNa_v1.1 Na^+チャネルαサブユニットの遺伝子発現を検討したところ、対照群と比較して1BP胎仔期曝露ラットの海馬では両者とも有意に増加していた。 以上の結果から、1BP胎仔期曝露によって生後14日齢という神経発達過程における海馬神経回路の刺激応答性が亢進すること、またこの現象にはAMPA受容体ならびにNa^+チャネルサブユニットの発現の増加が関連していることが示唆された。次年度以降は1BP胎仔期曝露ラットの行動学的解析を中心に、この変化が成長後の神経行動にどのような影響を及ぼすかについてさらに検討する予定である。
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