基盤研究(C)(2)145707929(平成14〜16年)「進行性ミオクローヌスてんかん発症機構に関する神経病理学的検討」・(C)(2)17591129(同17〜19年)「難治性てんかんの治療法開発のための神経病理学的検討」でWest症候群(WS)や進行性ミオクローヌスてんかんの病態を明らかにしてきた。本研究では患者生体資料と剖検脳を用いて、急性・慢性小児神経疾患での難治性けいれん形成の発症機序を酸化ストレス、興奮性・抑制性神経のバランス異常などの観点から解明する。酵素補充療法の導入後も中等度以上のけいれん・知的障害の合併がみられるムコ多糖症の剖検脳において、ムコ多糖を蓄積した神経細胞でDNAに対する酸化ストレスが生じ、その結果、大脳皮質GABA系抑制性介在神経細胞が減少しけいれん・知的障害につながることを見出した(Acta Neuropathol)。現在、急性の小児神経疾患であるインフルエンザ脳症・脳炎例に関して剖検脳と患者髄液を用いた同様な解析を進めている。一方、難治性てんかんの脳幹機能異常と大脳皮質のてんかん焦点との相互作用を追究するため、大脳基底核と密な線維連絡を有し筋緊張・レム睡眠の形成・維持に関与する脚橋被蓋核の脳発達障害剖検脳での変化を世界で初めて解析し、周産期障害(仮死後遺症、核黄疸後遺症)ではアセチルコリン神経が障害されカテコールアミン神経が代償性に増加することを明らかにした(Neuropathology)。現在、脚橋被蓋核病変と難治性けいれん既往との関係を多数例で検討中である。さらにはけいれんや知的障害を合併する神経線維腫症の剖検脳において、扁桃体、線条体、視床に非腫瘍性アストロサイト集蔟(cluster)が年齢とは無関係に高頻度に出現することを見出し、てんかん原性に関連する可能性を指摘した(Acta Neuropathol)。
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