研究概要 |
本研究の目的は、自閉症の神経病態を神経細胞の発達・シナプス形成異常と捉え、シナプス機能分子をコードするSHANK3遺伝子に着目し、その異常を分子レベルで解析することにより小児自閉症の神経病態を解明することにある。昨年度までに、重度言語障害を呈する自閉症・精神遅滞患者127例についてSHANK3遺伝子の配列を解析した結果、SH3領域をコードするexon11の直下流に存在する10-bpからなる2つのGCリピートにおいて、1つ欠失している患者1例および1つ挿入され3リピートである患者3例を見出した。また、SH3領域近傍で繰り返し配列である18-bp(6アミノ酸)が欠失している患者1例を見出した。これらの変異はDNAのメチル化に重要なCpGisland-2内にあることから、本年度脳発達過程のSHANK3遺伝子のメチル化について検討した。これまでに、ヒトおよびマウスのSHANK3遺伝子には5つのCpGisland(CpG-P,-2~-5)が存在することが知られている。そこで、発達過程(胎生17日、生後1日、7日、14日、20日、4週、12週齢)の大脳皮質でのSHANK3遺伝子のメチル化を検討した結果、全ての時期でCpG-P(プロモーター領域)は非メチル、CpG-3はメチル化されていた。一方、CpG-4および-5においては、生後直後は非メチルであるものの、その後脳の発達にともないメチル化DNAの割合が上昇し、4週齢においてはほぼ半量のDNAがメチル化されていることが判明した。また、患者において変異が見出されたCpG-2においては、生後7日齢から明らかなメチル化DNAが検出されるものの、14日をピークにその後減少することが確認された。現在、DNAメチル化の分子機能ならびにその機能的意義について解析中である。
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