研究概要 |
本研究の目的は、自閉症の神経病態を神経細胞の発達・シナプス形成異常と捉え、シナプス機能分子をコードするSHANK3遺伝子に着目し、その異常を分子レベルで解析することにより小児自閉症の神経病態を解明することにある。これまでに、我々が自閉症・精神遅滞患者のゲノム解析により見いだした複数のSHANK3遺伝子変異がDNAメチル化に関与するCpG island内に存在することから、脳発達過程のマウス大脳皮質におけるDNAメチル化の変動ならびにメチル化に関わる分子を検討した。ヒトと同様にマウスSHANK3遺伝子には少なくとも5つのCpG island(CpG-P,CpG-2~-5)が存在することが報告されている。 我々は、発達過程(胎生17日~3ヶ月齢)のマウス大脳皮質において、5つのCpG islandにおけるメチル化の有無について検討した結果、全ての段階でプロモーター領域(CpG-P)は非メチル化、CpG-3はメチル化であることが判明した。一方、CpG-2,-4,-5においては、胎仔期では非メチル化であったが発達とともにメチル化されるようになることが判明した。特に、これまでに我々が見いだした複数の変異が存在するCpG-2においては、女児特有の発達障害であるRett症候群の責任遺伝子MeCP2の遺伝子産物が結合することを見いだした。さらに、この領域から複数のSHANK3バリアントが発現していることが判明した。以上、SHANK3遺伝子のメチル化の分子基盤の解明は、Shank3の高次脳機能に果たす役割を解明するのみならず、精神遅滞・自閉症等発達障害の神経病態・病因を理解する上で重要な知見が得られると考えられる。
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