1.細胞核内におけるWASPの新しい機能解析 WASPの恒常的活性化変異によるX連鎖性好中球減少症および骨髄異形成症候群は、WASP蛋白質の3次構造が変化して常にactive conformationの状態となり、結果として骨髄球系細胞の分化停止や細胞分裂時の異常により引き起こされる病態である。本研究代表者は、恒常的活性化変異型WASP、野生型WASP遺伝子発現ベクターを、内因性WASPを発現していない骨髄球系細胞株K562の恒常的発現株を樹立し、マイクロアレイ法にて、遺伝子発現プロファイルを骨髄球系細胞の分化、アポトーシスに関与する遣伝子群の転写に絞って網羅的に検索したところ、WASP活性化が細胞核内で遺伝子発現調節に関わっていることがわかった。また、Cos7細胞を用いた実験から、恒常的活性化変異WASPはチロシンキナーゼによるチロシンリン酸化が亢進し、細胞内局在がより核に移行することも確認した。平成22年度は、WASPと遺伝子発現調節機構の関係につきChip法を用いて更に検討予定である。 2.常染色体性、Type-2WASとしてのWIP欠損症のスクリーニングの継続と病態解析 本研究代表者は既に、WIPがWASP蛋白質の安定性に重要な分子であることを報告している。常染色体性、Type-2 WASとしてのWIP欠損症の疾患概念を提唱するために、WAS様の臨床所見や経過がありながらWASP遺伝子に変異を認めない症例を対象に、国内検体の解析を継続して行っている。また、WASP蛋白質活性化後の蛋白質分解のメカニズムを、主にT細胞株を用いて解析し、蛋白質分解酵素やユビキチン-プロテアゾーム系が関与している結果を得ている。平成22年度は、T細胞におけるWASP蛋白質分解機構の詳細をユビキチンリガーゼの同定を中心に解析予定である。
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