研究概要 |
平成20年度は,免疫細胞の中でも,アレルギー反応の中心的エフェクター細胞である肥満細胞に焦点を絞って、研究を実施した。 肥満細胞は多能性造血細胞を起源とすることが明らかとなっているため、まずヒトES細胞から多能性造血細胞を分化誘導し,その分化誘導された多能性造血細胞から肥満細胞を分化誘導することを試みた。我々は,ヒトES細胞から効率良く多能性造画細胞を分化誘導するためには、胎生期の造血環境をin vitroで再構築することが有用ではないかと考えた。また、マウス由来のストローマ細胞の多くがヒト造血細胞にも作用することから、マウス胎仔の主たる造血臓器である肝臓からストローマ細胞を樹立し,ヒトES細胞をこのマウス胎仔肝ストローマ細胞と共培養した。胎生14〜15日のマウス胎仔肝から樹立されたストローマ細胞とヒトES細胞を共培養すると、培養10日目頃よりヒトES細胞は多能性造血細胞(Mix-CFC:mixed lieage colony-froming cell)は産生され始めた(Proc Natl Acad Sci USA 105:13087-13092,2008.)。そこで、培養14日目に採取されたMix-CFCを,stem cell factor、Flk2-ligand、IL(interleukin)-3、IL-6、顆粒球コロニー刺激因子、エリスロポエチン、トロンボポエチン等の種々のサイトカイン存在下で液体培養すると、赤血球系細胞、巨核球系細胞、顆粒球系細胞,肥満細胞等様々な血液細胞が産生された。特に,培養2週間後には、培養液中には多くの肥満細胞が出現した。以上の結果は,マウス胎仔肝由来ストローマ細胞との共培養により、ヒトES細胞から分化誘導された多能性造並細胞は、肥満細胞を産生する能力を有していることを示している。
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