研究概要 |
DNA損傷修復異常症責任遺伝子産物機能解析に関しては、Artemisと会合し、その安定性を決定する分子を同定し、その欠損による免疫不全症の可能性について検討した。またMrell異常によるAT-like disorderを日本で初めて同定し、機能解析を行った。この患者(兄弟例)では共に肺癌を合併していた。ATLDでは悪性腫瘍合併の報告はなく、その原因について生化学的解析を続けている(J.Pediatr. in press)。DNA損傷修復異常症の中のATについては、その簡易診断法を確立した(Leukemia,2009)。免疫異常症については、分類不能型免疫不全症を中心にT細胞レセプターのレパートア解析を行い、汎血球減少を示す患者や、赤芽球癆の患者において骨髄浸潤T細胞のレパートアの偏りを証明した。さらにB細胞でのレパートアを解析するシステムの構築に取りかかった。免疫不全症におけるAnergyや自己免疫疾患の発症機構については、ICOS欠損症を中心に検討を行った。その結果、記憶T細胞の著しい減少やThl,Th2,Th17,Treg subsetの生成に関与する転写因子の誘導が不良などが明らかになり、一方Grail,Cbl-b,Itchなどの誘導については主たる原因ではないことを示した。自己免疫疾患については、同じ変異をもち、姉だけが自己免疫を示す姉弟例の解析からIFN-gammaの産生不全、RANKLの誘導亢進、Itchの刺激後抑制などが関与すること、また活性型のT細胞と抑制性T細胞のバランスの乱れが発症に関与する可能性などを明らかにした(J.Immunol.inpress)。その他の免疫不全症についても、詳細な免疫学的解析からのアプローチを試みると共に、分類不能型免疫不全症での悪性腫瘍発生についてもゲノム不安定性を切り口に解析を行っている。
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