研究概要 |
(1)DNA損傷応答異常症におけるリンパ系悪性腫瘍発症の分子機構解明 ATM欠損マウスES細胞をin vitroで分化させ、V(D)J再構成過程を経て、異常細胞が産生される機構について解析した。その結果、今まで知られていたTCRα鎖再構成の時期より前のdouble negative Tの段階で、分化異常があることが明らかになった。 (2)DDR異常症以外の免疫不全症におけるDNA損傷応答の解析 WASや胸腺腫を伴う免疫不全症などを中心に、B細胞、T細胞におけるDNA損傷応答を解析した。その結果、胸腺腫を伴う免疫不全症ではB,T細胞新生能が低下し(V(D)J再構成能が低下し)、テロメア長が短く、一部ではDDR後のATMリン酸化も低下していることが明らかになった。 (3)免疫不全症におけるヘルパーT細胞サブセット及びT細胞レパートアの解析 分類不能型免疫不全症(CVID)を中心に、制御性T細胞群(Treg subset, Tr1, CD8 regulatory T cellsなど)についてその比率とサイトカイン産生能を検討した。その結果、自己免疫疾患を呈するCVIDの一部では、Tregサブセットが増加していること、一方IL-10,TGF-beta産生は様々であることが明らかになった。レパートアの偏ったT細胞亜群は主にIFN-γ産生群であったが、Anergyに関与するGrail, Itch, Cbl-bなどの誘導には大きな差を認めなかった。 (4)自己免疫疾患・腫瘍性疾患と免疫学的パラメータとの関連についての解析 100名程度の成人型免疫不全症を中心に、自己免疫疾患、腫瘍性疾患と、免疫担当サブセットの関連について検討を加えた。その結果、脾腫と自己免疫疾患の関連、血球減少と腫瘍性疾患の相関などが明らかになり、さらに詳細に解析を加えている。
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