研究概要 |
近年、NK細胞の抑制型受容体であるkiller cell immunoglobulin-like receptors(KIRs)のリガンドであるHLA-Cのドナーとレシピエント間の不一致が同種移植において、ドナーNK細胞によるGVL(graft-versus-leukemia)効果をもたらすことが報告された。本研究は急性リンパ性白血病(acute lymphoblastic leukemia:ALL)や神経芽腫などの難治性小児悪性腫瘍に対して、臍帯血移植を含む同種移植におけるKIRリガンド不一致ドナーの有用性および機構を明らかにし、移植成績の向上をめざすものである。 まず、成人末梢血および臍帯血ドナーNK細胞のNKレセプター発現をフローサイトメーターで比較検討したところ、KIR2DL1であるCD158a、KIR2DL2, 3であるCD158bの発現は、成人末梢血より臍帯血でいずれも低く、抑制型であるNKG2Aと活性型であるNKp30、NKp44の発現は有意差をもって臍帯血が高かった。さらに末梢血、臍帯血ドナーNK細胞の白血病細胞株に対する細胞傷害活性を51Cr releasing assay法により測定した。HLA-Cは、77番目と80番目のアミノ酸によってC1とC2の二つのグループに分けられるが、KIR2DL1はC2に属するCw2, Cw4などのHLA-C抗原を認識し、KIR2DL2, 3はC1に属するCw1, Cw3などを認識する。KIR一致および不一致の影響に関してドナー細胞と腫瘍細胞株をC1C1ドナー対C1C1細胞株, C1C2ドナー対C1C1細胞株の様に組み合わせ検討した。HLA-classIを発現していないK562に対して、臍帯血は細胞傷害活性が有意に成人より低かったが、C1C1型11q23転座型ALL細胞株であるKOCL50, KOPN1に対して成人と臍帯血で細胞傷害活性に明らかな有意差を認めなかった。C1C1, C1C2グループ別に細胞傷害性を比較したところ、成人末梢血、臍帯血どちらもK562に対してはC1C1、C1C2の2群間で差は認めなかったが、KOCL50, KOPN1に対してはC1C2ドナーの方が有意に高かった。以上より臍帯血においても成人末梢血と同様に、11q23転座型ALLに対してKIRリガンド不一致ドナーNK細胞の方が、GVL効果をより発揮すると考えられる。
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