本研究は急性リンパ性白血病(acute lymphoblastic leukemia : ALL)や神経芽腫などの難治性小児悪性腫瘍に対して、臍帯血移植を含む同種移植におけるkiller cell immunoglobulin-like receptors(KIR)リガンド不一致ドナーの有用性および機構を明らかにし、移植成績の向上をめざすものである。 小児難治性白血病の1つである11q23型急性リンパ性白血病細胞株に対する末梢血、臍帯血ドナーNK細胞の細胞傷害活性を51Cr releasing assay法により測定したところ、末梢血NK細胞、臍帯血NK細胞ともにKIRリガンド不一致ドナーが一致ドナーと比較して、より傷害活性が高かった。他の細胞株では、T細胞型急性リンパ性白血病がNK活性化型受容体MKG2Dのリガンドの発現が極めて高いことにより、末梢血、臍帯血NK細胞によるT細胞型急性リンパ性白血病に対する傷害活性は非常に強く、KIRリガンド不一致ドナーを選択することにより、その効果がより増強することを確認した。さらに、臍帯血NK細胞の細胞傷害活性が、ドナーのMG2DのSNPにより活性の差があることが示唆された。小児難治性腫瘍であるEwing肉腫、神経芽腫、骨肉腫、横紋筋肉腫瘍様腫瘍細胞株でもNK受容体リガンドを検討したところ、一部の細胞株でNKG2DリガンドのMICA/BおよびDNAM-1リガンドの発現が高いことが確認され、末梢血NK細胞による細胞傷害活性も示された。
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