研究概要 |
IgA欠損症は比較的頻度の多い先天性免疫不全症であるが、その病態は明らかでない。近年、IgA欠損症の病因としてTACI(calcium-modulator and cytophilin ligand interactor)遺伝子異常が報告された。そこで、IgA欠損の病態を明らかにするため、IgA1, IgA2サブクラスの遺伝子、タンパク発現の検討をおこなった。さらに、定常部領域の遺伝子欠失について検討した。その結果、低IgA血症患者のなかに、本邦2例目のIgA1遺伝子欠損症を同定した。この家系を解析したところ兄も弟と同様にIgA, IgG2, IgG4, IgEの低値を示した。遺伝子解析を行ったところ、弟と同様に免疫グロブリン重鎖定常部領域にCα1-Cγ2-Cγ4-Cεの大きな遺伝子欠失を認めた。IgAは検出可能であり、10〜20mg/dlを推移していた。IgAのサブクラスを検討したところ、すべてがIgA2に由来するものであった。このことから、IgA1遺伝子欠損であっても、通常のIgAの測定では、軽度低下を示す場合があること、軽度なIgA低下を示す(parial IgA deficiency)患児のなかにIgA1遺伝子欠失を有する場合があることが明らかになった。また、TACIが正常でありIgA遺伝子欠失を伴わないIgA欠損症の場合、IgA1、IgA2の両方のサブクラスの発現が低下していた。このことから、両方のサブクラスの発現にかかわる、共通のシグナルまたは転写調節因子の障害により、IgAの発現誘導の低下が生じることを示唆された。
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