研究概要 |
小児AMLの予後因子の探索として以下の解析を行い報告した。(Int J Hematol, 2010) (1) BAALC発現量;AML99 104例(M3とDown症候群は除外、normal karyotypeは29例)を対象とした。診断時の骨髄サンプルから抽出作成したcDNAを使用し、Real time RT-PCRにて解析を行った。BAALCの発現量を示す分散図をFAB分類別で見ると、M0, M1では高発現、M4, M5では、低発現の傾向を示し、これは、成人AMLの報告例と相関した結果であった。M2のBAALC高発現は、小児で特徴的であった。またnormal karyotype 29例について、BAALC高発現群と低発現群でOS及びEFSを検討したが、小児では両群に有意差を認めなかった。 (2) BAALC isoform ; BAALC低発現を示した全8例および高発現群の18例はいずれも1-6-8のisoformパターンのみを示したが、高発現群のうちの3例では、1-6-8以外にエクソン5を含む1-5-6-8 isoformが同定された。この3例は、いずれもBAALC高発現群に属し、2例がM4, 1例がM5aであった。臨床的には再発2例、寛解導入療法開始後day2に頭蓋内出血で死亡1例と全例死亡の転帰を示した。また3症例ともFLT3-ITDを認めなかった。したがって、小児AML(normal karyotype)で、エクソン5を含むisoform (BAALC高発現群)の予後不良因子としての意義が示唆された (3) CEBPA変異;normal karyotype 49例中4例(8.2%)に、新規のCEBPA変異を同定した。FAB分類上、M1とM2各2例であった。M1の2例は、C末側のDNA binding domainであるbZIP内のin-frame insertion (c.1074_1075insAGA及びc.1092_1093insCAC)であり、M2の1例は、N末側の遺伝子欠失(c.214_224delCCCCGCACGCG)、もう1例はN末側とC末側の両方に遺伝子変異(c.212_213insCとc.720_721insCGCACC)を認めた。これらはいずれもFLT3-ITDを共発現せず、長期寛解を維持しており、小児においてもCEBPA変異は、予後良好因子であることが示唆された。 また、新規細胞死の機序の探索としては、免疫不全マウス(NOGマウス)にPhlALL細胞を移植した系において、TKIを投与後、in vivoにおいてオートファジー細胞の同定に成功しており、今後、その機序の探索を行う。
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