研究課題
IGH-MYC転座を有する難治性B細胞性リンパ腫症例から、IGH遺伝子のもう一つの転座相手としてB細胞系に特異的な転写因子であるBACH2遺伝子を同定した。この症例のIGH-BACH2ではIGHCδのエクソン1とBACH2のエクソン2が融合し、キメラmRNAを発現していた。しかし、BACH2の蛋白コード領域はエクソン7から9に存在するため、このキメラmRNAではBACH2蛋白のみを発現していると考えられた。B細胞性悪性リンパ腫と多発性骨髄腫の細胞株を用いたリアルタイムPCR法による検討では、悪性リンパ腫細胞株ではBACH2の再構成を認めないにもかかわらず、いずれも発現を認めており、BACH2は転座以外のメカニズムでもB細胞性リンパ腫の腫瘍化に関与している可能性が示唆された。一方、多発性骨髄腫における18qの癌関連遺伝子の解析から、これまで知られていない新しいタイプの異常DCC転写産物を同定した。DCCの複数の領域を増幅するためのプライマーを設定してRT-PCRを行ったところ、エクソン1を含んだ転写産物だけが増幅できない細胞株が複数存在した。そこで、これらの細胞株では、転座などによってエクソン1の代わりに別の遺伝子領域が融合した新規のキメラ遺伝子が形成されている可能性を考え、cDNAバブルPCR法を用いて相手遺伝子の同定を試みた。その結果、DCCのエクソン2につながる2種類の未知の配列を同定し、データベース検索の結果、この配列はいずれもエクソン2とは連続しない、DCCのイントロン1の配列であることが判明した。融合したイントロン配列近傍の解析から、この融合はスプライシングの異常に由来するものであると考えられた。最近、同様のスプライシング異常によると思われる異常転写産物をいくつか同定しており、これらの異常転写産物の腫瘍化における役割について現在解析中である。
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